ホームステイの思い出 (その2) 王様気分
私が初めてホームステイしたのは、アメリカだったと書いたが、これは厳密に言うと違っていた。
実はその前にもうひとつあった。ホームステイというのには、あまりにかけ離れていたのでつい忘れていた。
私は若い頃、空手をやっていた。今では私の拳は豆腐のように柔らかいが、当時は瓦などを割っていた。
私の属していた流派の支部がオーストラリアのシドニーにあることを知り、早速手紙を書いて、
親善訪問したい旨を告げた。歓迎するという返事がすぐ来た。
まずは、支部長の家に1週間、次にそれぞれの門弟の家に1週間というふうに、招待された。
私は向こうでは指導者ということで、それぞれの家で丁寧に扱われ、歓迎された。
週末には、ピクニックなどに連れて行ってくれたりした。
特に、一軒の家では毎朝奥さんが冷たいジュースを持って私を起こしにきてくれた。
まさに殿様のような気分になった。
後日談だが、私は日本での仕事、家族など全てを投げ出し、そのままオーストラリアに永住したいと思った。
しかし、妻の巧妙な策略により、それは実現しなかった。私の人生で、最大の悲劇であった。